母の命日に捧げるバラード(遺作から想う)
田中公子(たなか きみこ)さん→ ぼくの母ちゃん。
彼女の命日に綴るブログ後編です。
「前編」を読むには→ こちらから
「カナダは遥か彼方じゃない」
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短歌に残してくれた母ちゃんの想い
エネルギーの塊みたいだった母ちゃんだけど、人知れず抱えた気苦労と年齢を重ねたことから、健康面での不具合が生じます。
●40歳で「乳がん」の手術
●63歳から「血小板増多症」
(8年5ヶ月)●65歳から「肺がん」
(6年2ヶ月)
そんな母ちゃんが、67歳から「短歌」の勉強を始めます。
きっと自分の短い余生を悟ったときに、想いを歌に残しておきたかったんだと思う。
旭川の「ときわ短歌」に入会し、先生やたくさんのお仲間さんたちから刺激と生きる元気をもらったようです。
もともと母の家系は芸術的センスに長けてるようで、
叔父は川柳や俳句、叔母は短歌、35年以上も前に絵画の勉強でフランスへ渡った叔父もいます。
祖母に至っては独自の節をつけながら、石川啄木の歌を口ずさむような人だったらしい。
そんな血筋が満を持して爆発したのか、小説を読み漁っていたことで彼女の感性に磨きがかかっていたのか、
とにかく、母ちゃんの作品は「すばらしい!」のひと言。
唸らずにはいられません。
夫婦の絆、相手を想う心
口づけを
交わした記憶も遠のきて
七十の路を共に越えゆく
ぼくはこの歌がいちばん好きです。母ちゃんのたくましさが響いてくるから。
彼女らしい、全力投球が見えます。
もちろん、「口づけ」のことはいっぱい覚えているはずだけどね(笑)
母:24歳、父:28歳で結婚 昭和38年
入院中に夫を想って詠んだ三首。
夫婦の絆を感じます。→
カーテンに
星降る病舎の静けさに
ひとり夕餉(ゆうげ)の夫を思えり
いつの日も
励ましくれる夫の声
頑張らなくてもいいよと聞こゆ
口数の
少なき夫の見舞う日は
臥せる(ふせる)ベッドの
軋みて(きしみて)かなし
(どちらも2006年の画像より)
弱った心身との葛藤を詠んだ歌
弱った身体と心に何度も負けて、
それでもなお生きていたいと何度も上を向き、
葛藤を繰り返し過ごした日々を伺い知れる歌→
病むことと
生きることとの重たさを
計りにかける春の夕暮れ
病むことと
向き合いつつも生かされし
明けゆく年に除夜の鐘聴く
(2011年の画像より)
去って行く息子を見送った歌
2011年に帰省したときが、一緒に過ごした最後の時間になってしまいました。
去っていく息子夫婦が涙で見えなくなっていたようです。又の日は来なかったね・・・・
送り来て
息子の振る手さえ曇りいて
又の日あるや病む母ゆえに
薄雪の
残れる朝に帰る息子(こ)よ
偲ぶカナダは遥かに遠し
永遠の母なり
ぼくには母ちゃんの愛情が強烈すぎて、そこから離れたい気持ちのほうが大きかった。
それも今では懐かしく思い出されます。
ぼくが年齢を重ねても、彼女は母親であり続けたってことですね。
ロッキーの
山に魅せられ住みし息(こ)よ
母には遠き異国の地なり
今日はゆっくり母と向き合って過ごします。
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